3.労働基準法のかたち
労働基準法の目的は労働者の保護です。
そのためには、使用者の行動に一定の制限をかけることが必要です。
使用者の行動に制限をかけるためには、
❶使用者が労働者に対して法的な義務を負わせる際の手続を定めること
❷使用者が最低限守るべき基準を設定すること
❸基準を守らない使用者に対しては、行政官庁が監督を行い、
必要に応じて罰則を科すこと
の3点が必要になります。
つまり、労働基準法のかたちは、以下のようになります
❶使用者はどんな手続を踏めば労働者に義務を負わせられるか?
❷使用者が守るべき最低基準はどのようなものか?
❸最低基準を破るとどうなるのか?
では、一つづつ見ていきましょう
➊使用者が労働者に義務を負わせる手続
労働基準法第2条2項には、次のように規定されています。
「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、
誠実に各々その義務を履行しなければならない。」
つまり、使用者が労働者に義務を負わせるには、
労働契約、就業規則、労働協約のいずれかの形式を取らなければなりません。
逆に言えば、これら3つの形式のいずれでもないものによっては、
使用者は労働者に義務を負わせることはできません。
なお、権利と義務は裏返しの関係にありますので、
これら3つの形式のいずれでもないものによっては、
労働者は使用者に対して権利を主張することができません。
今までの内容を専門用語で表すと、労働契約、就業規則、労働協約によってのみ、
労使間の権利義務関係が基礎づけられるという表現になります。
〇語句解説
「労働契約」
労働基準法には、労働契約に関する詳細な規定がありません。
労働契約法第6条に、
「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、
使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、
労働者及び使用者が合意することによって成立する。」
と規定されています。
つまり、口頭であったとしても合意さえあれば、労働契約は成立します。
必ずしも、書面で契約することは要求されていません。
多くの場合、労働契約によって労使関係は成立します。
「就業規則」
労働契約が個々の労働者と使用者の間で締結される一方、
就業規則は、その職場の労働者全体に適用されるルールです。
個々の労働契約の内容になっていなくても、
就業規則に記載があれば、労使間の権利義務関係の根拠となります。
労働基準法の89~93条に規定が置かれています。
「労働協約」
労働協約とは、労働組合と使用者又はその団体との間の書面での取り決めです。
労働協約を締結した労働組合に属する労働者全体にその効力が及びます。
労働組合がない職場には、労働協約がありません。
詳細な規定は、労働組合法に置かれています。
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